57番 紫式部 幼なじみとめぐり逢う物語



めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬまに雲隠れにし夜半の月かげ

~幼なじみとの出会い~

 百人一首の紫式部の歌は、幼なじみの月子(仮名)との、束の間の出会いを詠んだものです。ふたりが出会った時間と場所については諸説あります。「めぐりあひて」の歌や新古今集の詞書を素直に読むと、空に月が出ている夜、どこかのお屋敷で会ったととれますが、姫がほんとに真夜中にでかけるの? という疑問が、脚本を練っていく過程で出てきました。現代の私たちなら出かけるかもしれませんが、平安主婦の月子(仮名)が真夜中に出歩くことはないかも…。そこで、牛車と牛車ですれ違ったという説を採用して、イメージを膨らませました。牛車の御簾ごしに中に乗っている人がわかるの?牛車がすれちがったときに、昔の彼女の顔がみえたので、和歌を贈ったという例がいくつかあります。

~紫式部と和歌~

 久しぶりに幼なじみにあったうれしさ、すぐに別れなくてはならなかった残念な気持ち。和歌からストーリーが浮かび上がってくるのは、さすが、紫式部。『源氏物語』には作中人物が詠んだ和歌が約800首あります。気弱な和歌、強気な和歌、わざとかみあわない返事の和歌、紫式部が場面の人物になりきっていろいろ詠み分けています。

「夜半の月かげ」か、「夜半の月かな」か~

 第五句「夜半の月かげ」は、教科書などでは「夜半の月かな」となっています。「月かげ」は〈月の光〉。「月の光」!と言い切るか、「月だなあ」としみじみ詠嘆するか。ふたつある本文のうちどちらが好き?という問題です。
 なんで本文が2つもあるの?→続きは近日中に、座付き作家・野澤千佳子の〈中の人〉、鳥井千佳子が書き足します。鳥井千佳子は説明しだすと長いので(2020/06/09記)

★使用した画像について 源氏物語絵色紙帖 夕霧 詞花山院定熈 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/) 平治物語絵巻 六波羅行幸巻 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)を加工して作成


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